№875　めざましにハカ - 蓮は泥中より発す

7月28日

昨日ご紹介しましたラグビー映画「インビクタス」を我が家の剣士（休業中）とともに鑑賞し、押し寄せる感動に浸った後、やっぱりオールブラックスはかっこいいなあという話になりました。南アフリカチームの映画なのによう。

オールブラックスといえばハカ。ハカ動画をいくつかうっとりと眺めていましたら、週に３日程早朝に起床する必要のあるこの剣士が「めざましにハカってどうやろか？」と言い出しました。

目覚まし？

コンパクトな作りの我が家、しかも夏。あらゆるドアが開け放たれている早暁、情熱と活力を顕著に表わすというハカのリズムが聴こえてきたら、鈍い私もさすがに寝ておられないんじゃないでしょうか。

まあでも、私も自分の都合で時間構わずマントラを唱えたりしていますので、文句など言えた義理ではございません。「カ・マテ！カ・マテ！」と聴こえてきたら「朝だなあ、情熱だなあ」と思って安心して、改めて寝て観る方の夢の世界へ没入していこうと思います。

さて私は今、とあるゼミ（ミンミンゼミ・加藤ゼミ）に参加をしていますが、来月から新しい課題図書に向き合うことになっています。この本を提示された時にはあまりのいかめしさにビビったものですが、実のところ大変興味深く、フライングで読み始めています。「読み」始めるっていうか？たぶんこの本は「音読」しないといけない本なのです。

ハカも、特徴的なその踊りと共に言葉があります。マオリ族の人々が人生のさまざまな場面で行う儀式がハカだそうですが、言葉に魂が宿ることを改めて思い出させてくれますよね。

Yogaの世界ではマントラを詠唱します。日本語では「真言」と訳されていますが、心の働きを示す　manas　という語と、守る、という意味の　trāṇa が組み合わさってできたことばで「心を守る」という意味があります。

マントラはサンスクリットなので、意味がわからず唱えても価値はあるのか？という問いは当然ながら湧き起こるわけですが、これに関しては諸説あるように感じております。

慧心師は「わからなければ無意味」派で、日本語訳の歌詞も唱えるようご指導なさっておいででしたが、Ayurvedaのバット医師は「ざっくりわかっていればOK」という優しい立ち位置だったので、資料を配布し「意味を理解しておきなさいね」というスタンスでした（私の理解が間違ってなければ）。

まあでもですよ、人間存在は実際のところ多次元・多重構造なので「今この」人格が理解できない言葉であっても存在自体としては理解しているのだと思うのですよ（そもそも社会言語学的に、バイリンガルって多重人格なのだそうですね）。

なので、今この覚醒意識状態の私はサンスクリットの意味がわからなかったとしても、全存在的には、この言葉＝音の持つ意味やエネルギーはしっかりとわかっているはずです。

だってよ？　

我が家の猫だって、宇宙原初の音＝マントラ "om" を唱えると「む、なにごとか？」という顔をして周囲を見回したりしますよ？　なぜか不思議なことに「お前が唱えとんのか？」と私を見たりはしないで、空間全体をキョロキョロ見渡す。

猫にだって（いや、猫だからか？）サクッとわかるんですよ、この音のヴァイブレーションは。人間だって頭では「わからへん〜」と思っても存在自体や細胞は「来たな！」と思って耳を傾けるのさ。そう信じて私も日々サンスクリットでマントラを唱え、生徒さんにも「聴いてくださーい」と言って詠唱を聞いてもらっているわけです。

言葉や音の持つ意味や価値は大きい。それはもう確かに。

でもねえ、やっぱり一番大事なのは意識だと思うよ。イマココ、この目が覚めてる私の意識。マントラを唱える心＝意識は如何なるものなのか？　今この瞬間の何かが嫌で、それをなんとかしたい気持ちで唱えても ”STAY”　ちょっとまった！で、イマココの心の中身が音のエネルギーに勝ると思う。私はそう思う。

マントラを唱えるときには、マントラに心身を明け渡す気持ちで没頭し、ぐだぐだで躾のできてない猿の心をそこに縛りつけるように。そうすれば、マントラで人生変わるよ、っていうバット医師の言葉は確かに実現されると思います。

オールブラックスの屈強な選手たちも、闘いの前にハカを舞い踊ることで、緊張や不安、目前の試合にかける思い、そんな心のなかにあるものを綺麗さっぱり神様に明け渡し、預けているんだろうなあ。行為を神に捧げ、結果に拘泥しない。それが人を強くする。

カルマ・ヨーガの教えは世界共通だなあって思いながら、いつもハカを見、聴いてます。。こういうこと言うと「なんでもYogaの話にしやがって」って剣士に叱られるんですけどね。

強いわけだよ、オールブラックス。

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