蓮は泥中より発す

心身一如に生きるヨーガ教師の日記

№324 呼吸の健康効果

皆さん、マスクをして過ごす時間が長くなっていることと思う。
鍼灸の先生との会話で、呼吸が普段から浅い方はマスク着用時に息苦しさを感じないようだとの話題が出た。

なので、マスクをしている状態に慣れるのが大変な人もいるだろうが、そういう方は普段の呼吸がしっかりできているのだから、自信を持たれると良いと思う。また、どちらの方も、自宅など安全な場所ではしっかりと深い呼吸を意識してほしい。

ヨーガではプラーナーヤーマという呼吸の実践があり、体操実習でも呼吸を大事にしている。普段から呼吸に関する何かしらの実践を行っていない方は、やはり呼吸が浅いようで、一説には、肺の上部三分の一しか使用していないと言われる。

ただでさえ呼吸が浅いところに更にマスク着用という条件が加わることで、呼吸のみならず心身両面の調和に悪影響が出る可能性があるので、今日はその点について語っておきたい。

 

ヒトは生きるために呼吸という活動を必要とする。
生まれた瞬間に自発呼吸が始まり、誰にも教えられずに呼吸という活動を行ってきたわけで、自分の呼吸というものを改めて意識することはあまりないかもしれない。

 

パタンジャリは「ヨーガ・スートラ」において、呼吸についてこう述べる。
Ⅰ-31 苦悩、落胆、手足の震え、荒い息遣いが、乱心の兆候である。

Ⅰ-34 息を吐き、息を止めることで、心身を清浄にさせる。

呼吸の早い遅いによって、心が乱れたり、落ちついたり、血流の流れが変わったりすることは、誰しも経験があるだろう。スートラの記述を見ると、昔からゆっくりと息を吐くことによる、心身への効果が理解され活用されてきた事がわかる。息を止めることに関しては、禁忌もあるので自己流ではやらないで欲しい。

呼吸がゆっくりと深く行われるということは、要するに腹式呼吸ということ。
呼吸の時に胴体は全方位に動くが、特に重要なのは下腹部、腰のあたり、そして肛門の辺りになる。

こういったお腹を動かす呼吸がなぜ心身両面にいいのか。3つの面がある。
1.横隔膜を下に下げて緊張させる
2.肺の内圧と腹圧を高める

3.横隔膜と腹部や内臓の機械的運動を行う

詳しく説明すると…

1.横隔膜の上下には脳脊髄神経系と交感神経系がきており、このふたつの神経系を連絡する迷走神経系が横隔膜をつらぬいて分布している。そのため、横隔膜を使った呼吸によりこの3つの神経系に刺激を与えることができる。
悲しみや驚きや怖れという感情により内臓に症状が生じると漢方では教えているが、これらの感情を抱くと横隔膜は上がってしまうそうだ(お腹を使った呼吸が出来なくなる)。呼吸に合わせて横隔膜の上下運動を行うことで、精神的な落ち着きを保ち、ひいては肉体的にも良い変化をもたらすことができる。

 

2.肺の圧力は大気圧とそれよりも低い陰圧のあいだを往復する。
肺の末端の肺胞で酸素は直に血液と触れるが、この肺胞内にて血中の炭酸ガスやその他の有機ガスと酸素を交換し、ヘモグロビンに酸素を固定させ、体内を循環させ、新陳代謝を引き起こす。

いかに多くの酸素を血液中へ固定させうるかが、健康に影響を与えることなる。
また腹圧も高められ、内臓を刺激することになる。

 

3.深い呼吸を行うと、下腹部の緊張と弛緩により腸壁及び内臓の機械的蠕動運動への影響が生じるだろう。呼吸に伴う動きが腸の働きを助けることになり、結果的に全身の血液循環を活性化させると思われる。
呼吸法の実践により、体温が上昇することはあまり知られていないように思うが、とても大事な効果だ。

難しいことはさておき、毎日一度でも、下腹部を意識的に動かす呼吸を実践して欲しい。

ポイントは、息を吸った時下腹部が膨らみ、腰の部分が床に押し下げられること、
そして吐くときに肛門を締めること。
吐く息の方を吸う息よりも長めにすることだ(少しでいい)。

仰向け、立膝の姿勢で行うと分かりやすいし、手をお腹に当てて動きを感じながら行うと良いだろう。上記の点に気を付けて行うことで、体幹部の筋肉を鍛える効果もある。また、目を閉じて、内面の感覚を感じながら、その瞬間の一息一息に集中して行うことで、瞑想で得られるポジティブな効果も体感できるはずだ。