蓮は泥中より発す

心身一如に生きるヨーガ教師の日記

№514 初雪、悔恨

こちらは雪になっているのを知らぬままひかりを放つ遠雷あなた  小林久美子

 

 

 

雪も無事溶けた。よかった。
来週は少し暖かくなるらしい。
鳥取や岐阜という積雪地帯に住むようになって18年になるが、こんな時期まで冬タイヤに交換していなかったのは初めてである。物事に対する「なんくるないサー」度がだんだん上がってきて、色々といいかげんになってきている。そんなことでいいのか.

 

そこも雪降るの?と聞かれるが、時々降る。
降るときは気合を入れてドカンと降る。だから大変。

むかし「38豪雪」というものがあったらしいが、それを超える積雪が10年くらい前にあった。「平成23年豪雪」と名前がついてWikipediaにまで載っている。大晦日から降り出した雪が大変なことになってしまった、という事件。

何時間も車に閉じ込められた人、延々と歩いて帰宅するしかなかった人、そもそも帰れなかった人。停電の中震えながら年越しをした人、車庫などが雪で潰されちゃった人…、大変な目に遭った方がたくさんいた。ちなみに私は事故をした。

 

晦日に美容院に行って、その後、両親や姉の家族と一緒に蕎麦を食べる予定だったのに、降りしきる雪のなかでスリップして、乗っていた軽自動車はシャフトが折れた。でも娘にも私にもケガはなかった。よく怪我がなかったねとJAFの人に言われた。滑っていきながら、娘たちに「ごめんー!!」と叫んでいたことを覚えている。

 

JAFと姉の家族が同時に現場に到着。青森県三沢基地勤務経験のある、雪に強い現役自衛官がふたりも現れた。実に心強かった。
蕎麦が食べられなかったこと、注文していたお節料理を受け取れなかったことは無念だったがまあそれだけのこと。車は動かないけど死んだわけじゃないし、無事家にも帰れたし、まあいいかな、という感覚。

降りしきる雪は止む気配もない。当時、西伯郡南部町という山のなかに住んでいたので、雪は平地より多かったがそれにしてもすごい降りようである。小学校1年生だったJK剣士の背丈を越してどんどん積もっていく。それを見て「こりゃダメだ」と思い、雪かきを諦め、暖かい室内でお餅を焼いて食べた。雪かき後のお餅って、ほんとうに美味しいのだ。

我が家はテレビという機械がないし、そのころはSNSもほとんどやっていなかったので情報が入らない。何ということもなく平和なものである。ストーブの前で子供も猫もぬくぬくして、いかにも平和。雪がしんしんと降るとき、音は吸収されなんとも言えない静けさが生まれる。すべてのものが包まれていくような。

翌朝早朝5時頃、除雪車が走る音が聴こえてくる。いつもの冬の朝だったのだが、麓の平野部では、そんなに降らないと高をくくっていたのに山間部以上の積雪があり、大混乱が生じていた。

 

今、私が住んでいる米子市、そして米子空港がある境港市は、除雪のための予算がついていなかったらしい。市中は大混乱、しかも停電。暗くて寒い年越しをしたという嘆きをいろんな方から伺った。積雪対策のしっかりしている郡部に住んでいて本当によかった。路上の雪は、毎日きれいさっぱり掻いてあったから。麓の苦労などどこ吹く風。

このとき、以前私が働いていた航空自衛隊美保基地、第三輸送航空隊の補給倉庫が潰れた。雪の重みで屋根が落ちたのだ。よじ登って、雪下ろしができるような高さの建物ではない。空港にある格納庫を想像してもらえればよい。登りたくないでしょ?
「屋根が潰れた」と聞いたとき思った。
やっぱり。なんか変だと思ったんだよな。

いわゆる兵站職種だった私。バブルの遺産ともいうべき「補給倉庫新設、移転」というイベントを二つの基地で経験した。一度目は岐阜で、二度目は美保で。規模は岐阜の方が断然大きい。美保基地はそれよりは小さいが、それでも天井の高い大きな建物であることに違いない。でも、美保基地の方はなぜか柱が少なかった。柱が少ないと、運搬機材などの使用にも楽なのだが。

もう辞めていたから詳しいことは知らないけれど、「そんなに雪降らないから」ということで設計時に柱を減らしたらしい。官側が言ったのか、業者側が言ったのか知らないけれど。きっと事後の対応が大変だったろうなあ。そのネタで何十年もお酒が飲めるんだろうな。でも、普通潰れないよね…


この豪雪以来、私は絶対石油ストーブ派。ファンヒーターとかエアコンとか、いざというとき当てになりませんよ。ストーブだったらご飯こそ炊けないが、なんでも煮炊きできるし。
あと、道具は大事。雪かきスコップと、車の雪下ろし(そういうアイテムがある)、長靴、そして長靴の中敷き。もう一つ、何より大事なものがえんぴでしょう。

円匙。えんぴ。
日本陸軍におけるスコップ(シャベル)の名称。そのまま自衛隊でもこの名称が受け継がれている。ほんとうはこの漢字なら「えんし」って読むのが正しいそうだ。
全然、知らなかった…。なんだか恥ずかしい。日本人なら皆“えんぴ”って言ってると思ってた。これからは絶対「スコップ」って言うことにする。

さて、雪が少し溶けた頃、もう雪かきスコップでは無理なのである。例えば玄関先、そして駐車場周辺。車に踏まれて、溶けて、凍って、車に踏まれて…(ずっと繰り返し)。かちんこちん。

 

私は九州の長崎出身。坂の町長崎で雪が降ると、すべてが一時停止になった。車が坂を登れないから。でも昼には溶けた。ところが、山陰では影になったところや圧雪になったところは溶けない。ずっと春まで、そのまま。

そこでエンピです。割って、陽のあたるところに投げておく。そうしないとまた降ったとき二重に危険だから。JK剣士が、滑ってしりもちをついたりしたら大変だから。



と、ここまで読み返して、ただ雪のネタで何をこんなに引っ張っているのかと、我ながら呆れた。タイヤ交換をしていなかったことを、余程悔しいと思っている深層意識に突き動かされているのかも。来年は11月末に替えるんだ、絶対。


もひとつついでに書いておこう。
明日、無事タイヤ交換してもらうことになったけれど、前の冬みたいにぜんぜん雪が降らなかったら、あなたのスタッドレスタイヤも、私のスタッドレスタイヤも、どんどん無駄に摩耗していきますね。本来の役に立たずに減っていったタイヤのことを思うと、胸が切なくなるよね。でもそこにある道をただ走ることが大事。人生みたいに。

どんなに走行音がうるさくても。