蓮は泥中より発す

अद्वैत :非二元に還るプロセスの記録

№313 ぎっくり腰に対する考察

 

*ぎっくり腰になったときのアドバイス
・普段、足がつるとパニック気味になるなど、痛みを客観視できない方は、すぐに病院に行って鎮痛剤の投与(注射)を受けましょう。痛みの記憶が残ると、慢性痛へと移行してしまうことが予想されます

・ご自分の肉体に対する意識化に自信がない場合は、病院に行った方が安心でしょう

・腕のいい理学療法士の先生、柔道整復師の先生、鍼灸の先生と、普段から仲良くなっておきましょう

・ストレッチは危険性を認識したうえで行いましょう。特に体の柔らかい方は危険です。ほんの少しのアンバランスが生じただけで、身体は反応します。

…………………

ある日のレッスンで、最後の瞑想の時間に仙骨が「カクン」いって後方にズレた。
その前の体操の際に右の大殿筋を過伸展した感覚があったので、そもそもの原因はそこだと思われる。

その後、体を前傾姿勢にすることができなくなり、自分で何とかしようとあれこれやってしまったがために、立ち上がって歩行しようとすると腰部に激痛が走る。


これはいわゆるあれか、ギックリ腰というやつか。
確かに痛い。これはトラウマになるわ、と思った。
が、病院に行っても治るまいと思ったので、静岡在住の理学療法士・O先生に知恵を頂くこうと電話をかけた。

体勢を変えながらしばらく休み、「腹圧」が少し戻ったところで移動すること、安静を保つこと、という指示だったので、利用していた県立武道館の事務室に状況を伝え、1時間ほどその場で休ませてもらった。武道館スタッフの若いお姉さんたちがとても親切にしてくださり、本当に有難かった。

そののち、スタッフのお姉さん二人に付き添われて、腰に手を当ててそろそろと移動ながら車に向かったのだが、そこで感じたこと。
健常者の歩行ペースは非常に速い。そして県立武道館はとても広い…
普段なら全く思考に上らないことが、心をよぎっていく。

こんなに痛い場合、救急車を呼んだりするのだろうかと思ったのだが、多くは家族に助けを求め、迎えに来てもらって病院に行くそうだ。
私もその手を検討してはみたが面倒だったので、車中で座ったまま呼吸を調え、アクセルとブレーキがちゃんと踏めることを確認し、覚悟を決めて自らの運転で帰路に就いた。安全確認のため周囲を見回す動作が如何にも不安定、というよりもなんだか不吉である。不測の事態が起こったら死んでしまうかも…という危機感を持ちつつ走行したが、なんといってもここは鳥取県。時速40キロ以下で前だけをみて走るおじいちゃん・おばあちゃんもいるので、きっと大丈夫。もしここが名古屋や大阪だったら、迷わずタクシーを呼んだ。

無事帰宅し、駐車場からLINEで娘たちに救援を頼んだが、次女は無視である。長女はすぐに出てきてくれたが、私の姿をみて可笑しくてしようがないらしく、満面の笑み。
そこで心に浮かんだこと。若者のはちきれんばかりの健やかさは、時に残酷なのだな。

娘に縋りよろよろと家内に入る。下半身の血流が低下し強い冷えを感じるので、ストーブの前に横になって海老のように丸くなる。ほっとしてそのまま寝てしまった。

こういった場合、普通は病院に直行だろうと思うが、私にはO先生という強い味方もあることだし、自分のもつ知識も用いて何とかなるだろうと考えた。
とにかく今日の所は安静にすることにし、大事な娯楽用の“積読”書籍をこの時とばかりに手に取る。多和田葉子の不思議な世界観と共に、人生初のギックリをしみじみと味わった。