蓮は泥中より発す

अद्वैत :非二元に還るプロセスの記録

№372 ”自分”感度を上げる

「万所にある風(ヴァーユ)が空間(アーカーシャ)の中に永遠にあり続けるように、万物もまた我のうちにあると知れ。」 バガヴァッド・ギーターⅨ-6


この世界のありとあらゆるところに遍在している生命のエネルギーのことを、ヨーガを行じる者は”絶対者ブラフマン”と呼ぶ。
「絶対者」という言葉は人を感じさせるけれども、実は「場=フィールド」という意味なのだということが、井筒俊彦先生の本を読んでわかった。長く心にかかっていたことだったので、明快になって嬉しく思っている。


さて今日は「過換気」について

過呼吸のことを「過換気」ともいう
空気と過換気の関係は、食べ物と過食の関係のようなもの。
どんなによいものでも、身体が使える以上に多くとり過ぎると何かしら苦しむ

ストレス下で呼吸が速くなっているなら急性過換気だとすぐにわかるが、慢性的な過呼吸は気付かれていないことが多く、一般診療にかかる患者のおよそ10%は“過呼吸症候群”と呼ばれる問題を抱えているという。

過呼吸は様々な症状を伴う
頻繁なあくびやため息、はっきりした理由のない息切れ、めまいやふらつき、疼くような痛み、四肢のしびれや冷え、筋肉や関節の痛み、動悸、胸痛、胃のムカつき、過敏性大腸症候群、倦怠感、不眠症、悪夢、性機能障害、不安感、鬱 ……

ではなぜ、こんなにもたくさんの問題が過呼吸によって起こるのか?
過呼吸で血液のアルカリ度が高くなると、非常時の対応を担当する神経システムが警戒態勢に入るからだ。

心拍が上がり、アドレナリンや他のストレス化学物質が血流に放出されて、血圧が高くなり、筋肉は緊張し、消化活動は抑制され、体内のエネルギーが高活性状態になる。
また、ドキドキする心臓はパニック感を生み出すため、心理的にも不安感がかきたてられさらに上記のような体の反応に拍車がかかるだろう。そして悪循環に陥る。

二酸化炭素量が低くなると、身体は窒息状態にあるかのように反応する。
酸素をたくさん持っているにもかかわらず、血液細胞は組織に酸素を放出しなくなり、脳への酸素供給量は最大40%まで減少する可能性がある。

皮肉なことに、過呼吸で身体は酸素不足に陥るのだ。
「空気飢餓感」という苦しい感覚はさらなる過呼吸を呼び、問題を長期化させることになる。

過呼吸は、心身のストレスに対する体の正常な反応である。
それが習慣化されてしまう理由は、
・常にストレスに晒されている
・ストレスの処理方法を知らない
・心身の感覚が鈍ってしまっていて、ストレスに無自覚であるため対処できていない
・現在受けているストレスが、過去に経験した嫌なことに似通っていること
などにあると思う。

過呼吸のきっかけとなった事象が目の前からなくなっていたとしても記憶は残っているため、それを常に反芻してしまうことも多い。
習慣はしっかり体に根付いて本能的な動きと化してしまっており、からだの組織もアルカリ性の化学バランスに慣れっこになってしまっていることもある。

そうすると、過呼吸の状態がカラダにとっての標準の状態になるため、様々な症状が慢性化してしまうのだ。

緊急事態が平常だなんて、ものすごく恐ろしいことである。
「ヤバい!何とかしなきゃ」と思える感性を、まず養ってほしい。

感じることを通じて「今の状態では嫌!」と自分が思えるからこそ、変化を生じさせることができる。既に無意識レベルで定着してしまっている心身の仕組みを外から変化させることはほぼ無理だが、あなたがそうしたいと決めれば必ず変化は生み出せる

外から他者がなんといっても、人は変わらないものだ。
あなたが“自分自身を感じるセンサー”の感度を高めていくことが、何よりも大事。

次回は、過呼吸の身体的な原因などについてお話を。