蓮は泥中より発す

अद्वैत :非二元に還るプロセスの記録

№339 ポジティブなふりをしない

ストレスを受けたとき、からだのなかでなにが起こっているのだろうか?

ストレスには、自分にとって良いものと悪いものがある。
実を言うと、一見悪いことのように見えるストレスでも、結果的におおきな気付きを与え、人格を成長させてくれることがあるので、受け取るこちらがわの「うけとめ方」によって影響は大きく変わる。

このことを体験的に知っているので、インドの古典「バガヴァットギーター」では、とても美しい表現でそのことを伝えている。

 “絶えず流れ込む川の水を受け入れ、
  満たされながら、海は全く揺らぐことはない。”     第2章70章

なので、ゆくゆくは「ストレスを自分にとってポジティブな影響に変えて受け取れる方法、および受け容れることのできる器」を養い育て、対症療法的・一時的にストレスに反応することから卒業してほしいわけだが、まずはストレスの影響についてみていこう。

自分にとってネガティブなストレスを受けたと感じると、脳の苦痛回路 ”HPA経路“ が活性化する。
そうすると、キラーストレスという悪影響があらわれ、動脈硬化、免疫系ダメージ、がん、突然死といったことが生じ得る状態になってしまう。

この状態は、ストレスを受ける本人の、情動や思考の回路に大きく左右される。
ということは、情動や思考の回路を修正することで、医療的な効果が最大限になるということでもある。

一見前向きにみえるが、無理をしているひとや、むりやり元気を装っているひとがいる。
心あたりのある人は多いかもしれない。ヨーガを始める前のかつての自分も正にそうだったわけだが、こういう人のことを「ポジティブぶりっこ」と表現した方があるという。

ポジティブぶりっこは、対外的には高評価を得ることができるだろうが、自分の内面の状態では大変なことになっている。
外面と内面のギャップによる反動で、苦痛系回路(HPA経路)がフル活動し、肉体的なダメージが蓄積していくのだ。

人間は社会的ないきものなので、立場上推奨されるポジティブな態度を”偽装“せねばならないときもある。そうすると、偽装された自己イメージが肥大化してしまい、本来の弱かったり、しょんぼりすることもある、しかし同時にいきいきとした自由度を持つ自分が、イメージに飲み込まれてしまうのだ。

からだの不調は結果的に生じたものなので、そこにだけ注目して、肉体の悪いところを除去するという視点ではなく、本来の自分自身にとってより楽で自然である状態と、対外的な表現をに一致させていくような努力も同時になされて欲しいと思う(ふだん意識できていない自分の側面と時間をかけて向き合うことが必要なので、簡単なことではないけれども、大いに価値のあることだ。)
それこそが真の健康へと至る道だと思う。

スッカ(sukka)とはサンスクリット語で「苦痛のないこと」を表すことばだ。
あたまで考えた楽であることと、肉体の感じる楽の双方を調和させて、あなた自身のスッカの境地を見出してほしい。