蓮は泥中より発す

अद्वैत :非二元に還るプロセスの記録

№298 思っていることを聴いている小さな生きもの②

前回、ヨーガ療法で思いもよらない疾患にも改善がみられるということを書いた。
西洋医学において治療法がない、とされている疾患は多々あるわけだが、慢性疲労症候群という病気もその一つだ。この疾患にヨーガ療法が効果を上げ、2018年の「世界を変える論文」の一つに選ばれた。
 
疾患や症状により禁忌(ぜったいにやったらいけないこと)は異なるが、実習の核となる大事な点は変わらない。
この療法の指導の際に大事になる点をざっと挙げると、以下のようなものになる。
 
①意識して行うこと(動作、呼吸、感覚、肉体の反応、感情)
②自らを客観視すること
③内面に湧き上がって来るものをジャッジせずに受け入れること
(他者と自分を比べないことも含む)
 
が、これでなぜ治るのであろうか?
現在の理論だけでは、この点を説明しきれていないように感じる。

ヨーガは肉体から始め、自らの内面に至りその変容を引き起こすものだが、「なぜ肉体から始め、常に身体的実践を重要視するのか」ということに、その鍵がありそうな気がする。
 
上にあげた3つのポイントはどれも精神的な注意点だが、これが肉体に大きな影響を及ぼす訳だ。
なぜ?不思議だと思いませんか?
こういうことをお医者さんに話しても、優しく微笑んでスルーされる確率が高い。心のなかでは「アホなことを言って…」と思っているかもしれない(もちろん、そう仰らない医師もいるかもしれない)。
 
今から数年前に次女が虫垂炎になったとき、主治医は「心が原因で炎症を起こすなんて、ありえませんから」と言った。
当時、娘は所属する道場で来季の部長就任を打診されていたが、感受性が強い娘はこの役割に対して大きなプレッシャーを感じていた。私が思うに、腸に炎症を起こさせたのは間違いなくこの一件に対する、娘の真剣な思いだ。
あの先生、今頃どうしてるのかな。いまだに同じことを言っているのかも。
 
「心身相関」という言葉をご存じだろうか?
心と体は緊密に結びついている、ということを示す言葉だ。
 
心の力は怖ろしいほど強いが、人がその気になればきちんと飼いならすことができる。心の働きを猿に例えることがあるが、家の中をめちゃめちゃにしてしまう悪い猿もいれば、主人の言葉に従って愛らしい芸を見せる猿もいる。皆さんの心はどちらだろうか?
 
「私」が意を決して、「心の奴隷にはならない、心の主人は私だ」と思い定めれば、その為の訓練方法は色々とあることがわかるだろう。
 
今どきは「腸脳相関」という言葉もある。心の声を腸内細菌が聴いている。あちらも生き物だから、体内で響く声には敏感に反応するのだろうか。自らが意識して調えた意思の声を聴かせるのか、騒がしく動き回る心の声に勝手に反応させるのか、私たちは決めなければならない。
 
肉体に大きな不調が出るまえに、そのことに取り組んでおかなければならない。