蓮は泥中より発す

心身一如に生きるヨーガ教師の日記

№487 自前のコルセット

君は君のうつくしい胸にしまわれた機械で駆動する観覧車   堂園昌彦

 

 

 女性にとって体型というのは重大な意味を持つもののようで、皆さん何かしら気にしておられるようだ。私はどうなのかと言うと、毎日朝晩、鏡で確認している。一瞬一瞬の理知鞘の働きと意思鞘による制御が、モノである肉体(食物鞘)に反映されると考えているから。

ヨーガでお教えするのは意識化と客観視。意識化の妨げになる余計な視覚情報はない方がいいので、教師の体型が明確にわかる服は着ないようにしてきた。無意識に先生との比較が起きることで理知鞘が障害するからだ。

あるスタジオと契約を結んでいた時、男性オーナーからもっと肌を露出するように言われ、バカらしくなって辞めたことがある。当時は“ヨーガ療法士”としての矜持みたいなものが高くあったのだ。今はそんなものはないけれど。
そもそもレッスンの最後には副交感神経が優位になり寒さを覚えるので、薄着では辛い。リラクゼーションが苦行になってしまう。

 

 

肉体の、どこをどのように気にするかは人によると思う。
特殊な環境にいたお蔭で、肉体はその気になればどんな風にでも変えられることを知った。何十キロも歩ける、毎日10㎞走れる、大地は這いまわれる。なんでもできるとわかると面白くなって、水泳や自転車を習って耐久レースに出て、飛騨の山で命の危険を覚えるまでスキーをした。当時の写真を見ると…、逞しい。腕がハムのよう。

当時は大きな筋肉ばかりを使っていて、心身細部への配意がなかった。
少し食べ過ぎると脇腹の肉(ハミ肉という)がだぶつくし、腕は逞しいのに二の腕は締まりなくたるんでいる。太腿の前側は強く張って太く、反り腰で痛みがある。油断するとお尻が垂れる。毎日こんなに運動しているのに!

 


3年ほど前にたった1年だけ、ボールルーム・ダンスに真剣に取り組んだ。
前年の研究総会のテーマが「認知症とヨーガ療法」で、ダンスは認知症に良いと聞き、熱心にダンスをやっている生徒さんに色々伺ったところ、なぜか個人レッスンを受けることになってしまった。

シューズはダンス専用のもので足の動きにしなやかに添うが、ほぼつま先立ち、そして小走りで室内を移動する。ヒール高は7㎝。

ダンスとヨーガの違いは、人に見られることを想定しているかいないかということが第一。本来ヨーガ行は人に見せるものではないが、ダンスは見て欲しい。そして美しくありたい。
次には相手がいる、しかも異性。ずっと片手をつなぎ、背には手が添えられる。
また、当然ながら音楽に合わせねばならない。
これは認知症予防に最高だということは理解できた。なにもかもが活性化する予感。

 

最も困難を覚えたのが、男性のリードに合わせること。
「僕のリードを待って!」「先に行こうとしないで」と何度叱られたことだろうか。
男性の手の動きに入る力を感じて、導かれるように動かないといけないという。「おいで」と言われるまで待てってことね。「黙ってついてらっしゃい!」という感じのキャラだったから、そういう路線は未体験。

 

ダンスのお蔭で、ハイヒールを履きこなすことは筋力を育て、結果的に女子の肉体を美しくするということがわかった。内ももと体幹が鍛えられ、お尻は上がる。
発表会でデモを披露して下さった90代のマダムの背筋はすっと伸び、スタイルも美しかった。背中なんてまったく曲がっていない。加齢は言い訳にできないことをマダムは体現していた。

レッスンは訳あって1年で中断してしまったが、今の私は10㎝ヒールもヘッチャラである。先日はJR境線に乗り遅れそうになって、ハイヒールでダッシュもした。が、1年ぽっちの取り組みでは、ヒールでも走れるようになるのが関の山なのである。上半身の課題までは克服されなかった。そういえば先生に「手が踊ってない」と叱られていたな。

しかし私はO先生と出会った。
理学療法士のO先生は、痛みに苦しむ人と悩める女子の救世主である。

打ち合わせと称してご相談すると、細かい注意点を丁寧に教えてくださる。毎日のルーティンでそのことを意識し、普段のなにげない姿勢に気をつけることで劇的な変化が生じる。意識化の力は怖しいほどに強い。「たったそれだけでこんなことになるの?!」ということが起きる。
ちなみにO先生は、体型を見ただけであなたの秘密がわかってしまうそうですよ…

神は細部に宿る。

もしあなたがヨーガを通じ、自らの存在を祝福するために肉体の美しさをも追求したいのなら、週に一度のレッスンだけではなく毎瞬の意識が大事になる。なにかで締め付けられたからだにくびれは生まれない。O先生曰く、女性らしい美しさとは、柔らかいしなやかさにある。

ちなみに以下の着意点は、一応のところはO先生に見て頂いた。
実際は個々の状況により大きく異なるが、カギは呼吸に伴う動きだ。いつも傍に恋人がいるような気持ちで優雅に取り組んでみて欲しい。

皆さんもいつかあなたのO先生に出会えますように。もちろん自分で日々取り組むYogaも忘れずに。


【食物鞘を美しくする着意】
・呼吸のとき、胴体が全方向(肩、胸、お腹、背中、脇腹、会陰)に動くように留意
・下着等でからだを締め付けず、呼吸に伴うからだの自然な動きを損なわないこと
・自分の肉体は自分で支える(自前のコルセットを育てる)
・重力に対してしっかり体を支える:大地から支えられている感覚を持って動く・座る