蓮は泥中より発す

心身一如に生きるヨーガ教師の日記

№189 どうなるために潜在力を発揮するか

このところ、以前図書館で借りて楽しんだ本を、文庫で入手して再読している。
今月読み返した本としては、伊坂幸太郎「ゴールデン・スランバー」、桐野夏生「OUT」「残虐記」など。

で、昨日はこの本 ↓ を再読していた。
ゆっくり楽しもうと思っていたのに!あまりの面白さに1日で読んでしまった…。
あー、また娯楽本難民(*)に戻っちゃったよ。 

人間をお休みしてヤギになってみた結果 (新潮文庫)

人間をお休みしてヤギになってみた結果 (新潮文庫)

 

 *余談:個人的に、読書のカテゴリーに3つある。

①難解本=背伸びして格闘しながら読む本。現在は、マイスター・エックハルト井筒俊彦先生にお付き合い頂いている。鉛筆と赤鉛筆の両方を手に、最近は耳に指を突っ込んで音読しながら読んでいる(マントラ詠唱効果を狙っての実験を兼ねて)。
②仕事本=レッスンや講義で活用でき、学べて、経費で落とせる本。ここが一番守備範囲が広い。昨日から、「マインドエクササイズの証明」D・ゴールマン他著の再読中。積読も一杯控えている。
③娯楽本=楽しみ・休憩のための読書。娯楽だが、線は引きながら読む。常に不足中。


さて、ヤギになっちゃった話です。

 


トーマス君はロイヤル・カレッジ・オブ・アートを卒業。大学院の卒業制作をまとめたプロジェクトで話題になった人。その後泣かず飛ばずで既に33歳。人間特有の悩みを数週間だけ消しちゃうために、動物になっちゃったらいいんじゃない?と思ってまずは象になろうと思ったのだが、色々あって結局はヤギになることにした

数多の専門家や研究者が、トーマス君の熱意に絆されて協力してくれる。最終的にトーマス君は、ヤギたちとヤギ飼いからヤギと認められたのだ!しかもアルプスを四足歩行で超えた。

四足歩行のためにアイテムを作る過程で、椅子の上からヤギのように前脚(前脚…?)でジャンプしようとするトーマス君を、痛みに苦しむ人間のために真面目に人工装具を作っている人たちが止める。
「そういうことはやるべきじゃない、肩が外れるし、鎖骨を骨折してしまう。…ヤギがとても高い場所から飛ぶことができるのは、肩甲骨を外すことができるからだ。」

そうなんだ!
トーマス君は思う。「人体にはほかにも多くの微妙なところがあり、健康で動き回ることができる時には考えもしないけれど、あまり上手に動かなくなると途端に気付くものがある。」
そうなんだよ、ヒトがそれに悩むのがだいたい45歳頃と私は見ている。ヨーガ教室に来たくなるお年頃。

ヒトであるトーマス君がヤギになって四足歩行をすると、ヒトとしてのトーマス君の肉体にかかる圧力が、体をぶっこわすという。半身不随になって帰ってきて欲しくないから、という専門家の心も動かしちゃったトーマス君。人口装具を作ってもらえることになった。

ただし条件がある。
「骨盤をより広範囲で動かすことができるようにストレッチをすることと、膝腱のストレッチをして、膝が胸につくようになっておいて欲しい」

私もここで「自分はヤギになれるか?」と考えた!(膝が胸につくから)。
トーマス君はこの瞬間、ヨガクラスに行くことを決めた。

ちなみに人が人口装具を必要とする理由のトップは、非健康的なライフスタイルなのだそうだ。
「砂糖と脂肪とアルコールとタバコが潤沢にあり、仕事と娯楽の大半はイスに座っていればいいだけの環境を作り上げ、その環境が僕らをダメにしているように思える」と、トーマス君は言う。私も同意する。

ヨーガがストレッチと思われて嫌なのは、それがほんの入り口だということが知られていないからなのだが、玄関先で元気になって去っていく人もたくさんいていいよな、と思わされた。
ヨーガ療法は玄関先のサービスでいいんだなとも思った。立派な玄関で奉仕したらいいんだ。

しかし同時に、ヨーガは、人皆が「やぎになろうっと」と思える精神の自由度を発揮させるためのものでもある。心・魂の自由度なくして、体だけが柔らかくなっても仕様が無いし、実はそんなことは起こらないと私は思っている。中身が柔軟になるから、外側もつられて柔らかくなるだけ。

ちなみにトーマス君は、ヤギになったことで2016年のイグノーベル賞・生物学賞を受賞した。1時間11分あたりで四足歩行のトーマス君が登場、スピーチはその2分後くらいから始まります。

日本からも、立命館大学の東山篤規教授と大阪大学の足立浩平教授の、「前かがみになって頭を逆さにし両足の間から見ると物の見え方が変わる」ことについて調査した股のぞき効果の研究が知覚賞に選ばれている。

やっぱりね、思うように生きていいんだよ、ヒトは。
古来、ヨーガは人の潜在力を発揮させるためのもの、と言われている。
ヤギになるために潜在力を発揮させたトーマス君を、私は尊敬する。


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