蓮は泥中より発す

अद्वैत :非二元に還るプロセスの記録

No.750 一緒に涙を

9月21日

昨日は京王線に乗って千歳烏山へ。しげにいちゃんに会ってきた。

現し身を離れた=遷化・入滅といってもいいはずのしげにいちゃんは、絶対者ブラフマンと共にいつも私たちと一緒にいてくれる。でももう一緒にご飯を食べに行ってはくれない。人間のからだという軛を離れた存在だから。

なので写真に向かって香華を手向け掌を合わせるとき、どうしても、「なんで行っちゃったんだよう!」と思う。今日もそのようにテレパシーを送ってきた。


さてさて、今回の上京前日、JK剣士が「一緒に見て欲しい動画があるにー(*米子弁です)」と話しかけてきた。こういうときはタイミングを逃さず「うんうん」と応え、サクッと仕事に段取りをつけねばならない。そして一緒に、ハハのものよりグレードが高いJK剣士専用PCを覗き込んだ。

今年、ちゃんとインハイあったんだよ。石川で。
そこで福岡代表の中村女子学園が、なんと!5連覇という偉業を達成した。4連覇を超えるって、ほんっとに大変なんだよ!
JK剣士推薦動画は、その中村女子学園が2021のインハイ出場を勝ち取るまでの物語。

大将=部長のMさんは、インハイに繋がる大会前に左手首を怪我してしまった。それでも大将としての役割を果たし続けようと必死に挑み、あるときは堂々と勝利を納め、あるときは闘うことを許されず、苦しいなかでも叶えたい夢を見つめて一歩一歩進む。

「去年闘えずに去った先輩たちの無念を晴らしたい」ということも、彼女の大きなモチベーションのひとつ。その先輩たちからの激励がOnlineで行われた様子も紹介されていて、そのなかにRさんがいた。

JK剣士が初めてゼンチュウ(全国中学校剣道大会)に出場した時、遥々佐賀まで応援に行った。しげにいちゃんと奥さんもわざわざ足を運んでくれた。

大会の花は団体戦で、JK=当時JC剣士も団体戦に出場しているので、ほとんどの人は個人戦を見ないで帰る。でも当時JCだった剣士に「もったいないよ、ここまで来たのに個人戦見ないなんて」と言われて、急遽滞在を伸ばし女子団体戦も観戦した。

その年、敢闘賞をもらったRさん。でも間違いなく彼女は優勝しか目指していなかった。
何が起こるか分からないのが全国の舞台。JK剣士曰く「怖いくらい強い」彼女にとっても勝負は終わるまでわからない。女子個人決勝戦を見て帰ろうとした時、階段の踊り場で保護者に縋って号泣する女子学生がいた。もしかしたらRさんだったかもしれない。

だからその動画でRさんが現れたとき、佐賀でのことやJK剣士とのこれまでを思い返して、胸が詰まった。この高校に進んだRさんは昨年インハイに出ることすらできなかった。インハイがなかったから。剣道をするために選んだ学校で、自分の剣道を披露したい最も大きな舞台が奪われる苦しさは、たくさんの人が味わった。

「そんなんしゃーないやんか、もっと大変な人おるんやから」
と言われればそれまでだが、彼女たちには彼女たちにしかわからない苦しさがあった。そのことを完全に理解することなんてできないが、それを感じとる感受性は持っていたい。

 

JK剣士は南の島にトンズラしようとしているが、剣道を棄てるわけじゃない。だからこんな動画を私に見せて、自分はもう見たはずなのに私と一緒に涙を流す。

この子達の剣道にかける思いのなんたるかも、誰かのほんとうの哀しさや悔しさも、他の誰かが十全に理解することはできない。でも、単に想像にしか過ぎなかったとしても、気持ちだけは寄り添っていたい。寄り添おうという意思を持っていたい。ただ話を聴くことしか出来ないのだとしても、、ただそっと抱きしめるしかないとしても、聴かせて欲しい。

後輩たちの5連覇を心の底から祝いながら、本当はその偉業を自分たちが達成したかったというRさんたちの無念の思いにも、心を寄せていたい。
悔しくて身も世もないほど泣けるくらい何かに打ち込めることを、美しいと思って生きたい。