蓮は泥中より発す

心身一如に生きるヨーガ教師の日記

No.720 うたと詩

静かなる庭に足音響きいて月かもしれぬ 鬼かもしれぬ   筒井宏之

 

 

 

7月21日

思考停止になると詩歌が読みたくなる。
昨年の今頃、非常に印象的な体験をして思考停止になった。そのときから現代短歌にハマってきたが、今年はなんとなく詩の方がしっくりくる感じで谷川俊太郎の詩集を読み返している。

 

現代短歌に興味を持ったのは20代半ば。まずは与謝野晶子の伝記を読み、こんな鮮やかな生き方をした女がいたのかと驚いた。現代社会でも不倫は大騒ぎだが、あの当時あんな時代に若き晶子が恋した鉄管も既婚者だった。しかもその鉄幹を友人と取り合いまでし、堺から東京まで追いかけ飛んで行ってしまった。当時、非常に保守的な世界に生きていた私からすれば「なんてこったい!」と言いたくなる大事件である。このときから晶子の作品のいくつかを好んで愛唱するようになった。

「狂ひの子われに焔(ほのほ)の翅(はね)かろき百三十里あわただしの旅」
「清水へ祇園をよぎる桜月夜こよひ逢う人みなうつくしき」



子どものころ物心ついたときから安野光雅の大ファンだった私が、彼が挿絵を描いていた俵万智編著の短歌集を手に取ったのは何よりもまず絵が見たかったから。この本の挿画は版画風になっていて歌の句がそのまま描き込まれていた。それに与謝野晶子の影響で近代以降の短歌に興味を持てていたこともあったから。ちなみに小学生の頃、百人一首伊勢物語にハマったこともあった。見かけによらず文学少女だったのだ。

「名にし負はばいざ言問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと」 伊勢物語


俵万智が編んだこの本に紹介されている歌の多くには相当ハマった。俵万智の選は実に秀逸だ。

「あかあかとほほけて並ぶきつね花死んでしまえばそれっきりだよ」 山﨑方代
「美しき誤算のひとつわれのみが昂りて逢い重ねしことも」 岸上大作
「人間のいのちの奥のはづかしさ滲み来るかもよ君に対へば 」  新井洸

 


そして今年の今、すっかり谷川気分。教科書にも載っている彼の詩、

  人は愛するということ 
  あなたの手のぬくみ 
  いのちということ    「生きる」

もいいが、詩集「手紙」に収められている「あなた」でノックアウトされた。

  あなたは私の好きな人
  死ぬまで私はあなたが好きだろう  
  愛とちがって好きということには
  どんな誓いの言葉も要らないから   「あなた」


今日初めて出会った詩も良かった。谷川俊太郎はきっと、人を愛することに躊躇しない人なんだろう。やっぱりいい。

自分の中で言葉が生まれてこないとき、こうして詩歌に滋養される。これも間違いなく豊かなこと。



   地球には五十億もの人がいるというのに
   そこにあなたがいた ただひとり
   その日その瞬間 私の目の前に

   本当に出会った者には別れはこない
   あなたはまだそこにいる          「あなたはそこに」