蓮は泥中より発す

अद्वैत :非二元に還るプロセスの記録

№596 規則やぶり

雨ひかり雨ふることもふっていることも忘れてあなたはねむる  笹井宏之

 

 

 

3月9日
出張…5日目か。
今日は長女ぶーちーと感動の再会。の前に麹町でお仕事。そして人生初担々麺をご馳走になった。「ラーメン=B級中華萬龍軒」の私にとって、麹町・超豪華中華の担々麵はすべてが驚き。まずは価格がににに、にせんえん!こんな拉麺をご馳走になって良かったのだろうか…萬龍軒の夜定食はご飯をぜんぶ食べちゃったら消化不良になるくらいのボリューム(カラアゲ大2個付き)で900円(税込)。しかも、人生でなかなかない”連日拉麺”だったのだが、昨夜敬愛する規夫師匠にご馳走になってしまった塩ラーメンも萬龍軒の夜定食900円税込を超える価格だった。東京の拉麵文化おそるべし。間違いなく鳥取の拉麺偏差値は低い。ハップンせよ!鳥取の拉麵たち!

 

さて、感動の再会。南北線目黒駅で落ち合ってシェラトン都ホテル東京へ。ぶーちーは八芳園でバイトしたいんだって。どんな場所にあるのかも知らないみたいだから連れて行って(前を通り過ぎて)、お気に入りのカフェで素敵なお庭を見ながらお茶してみた。このお庭の向こうに、八芳園はあるんだよ。

八芳園っていえば、亡きおにいちゃんと出会ったときの仲間・だいちゃんがケッコン式を挙げたところ。そのとき、水木しげる先生のお筆によるラベルがイカした「のん氣にくらしなさい」「なまけ者になりなさい」という焼酎に、おにいちゃん含め三名の連名、しかもニックネームで「しげ、ますお、隊長」の熨斗をつけて送った記憶がある。今オトナになってふりかえるに、いくらだいちゃんは気心が知れた仲間とは言え、あれを八芳園にまで送っちゃうのはいかがなものだったろうか。お遊びが過ぎたんじゃなくて? だいちゃんが奥さんのご実家の方から白い目で見られていたら可哀相。ま、でもこの前会ったときもだいちゃんはいつもどおりだったし、もうそんなん時効よね。

 

 

そう、時効といえば。
ぶーちーは鳥取県民しか入れない女子寮に住んでいる。目白にある清和寮、乙女のみが住む園である(たぶん)。先日ぶーちーは、その寮にかつて住んでおられた先輩からお話を伺ったとのこと。あらゆる規則というものは破られるためにあるのであるからして、先輩方の武勇伝もなかなかのものであったらしい。

寮~規則、ときて私の存在のなかにデジャブが起こった。はるかむかし、これとおなじ光景をどこかで見たことがある…そうあれはK空J衛隊のH南基地。わたくしがまだ逞しい大腿四頭筋を持っていた22歳の頃。

 

一般業務をしばしおやすみして学生として気楽に生きている期間が、自衛官にはあった(いまでもあるのだろうが)。ガッコウが各地にいくつかあって、階級が上がったり専門業務で次のステップに上がるときなど節目節目でガッコウに入る。そのガッコウはかの場所では「教育隊」と呼ばれている。

デジャブで浮かんだのは、スタッフ・サージェント(という階級)に昇任したら入るガッコウのこと。みんなあんまり知らないけど、下士官の場合採用されたからって定年まで勤められるわけじゃなくて、このスタッフ・サージェントになれるかどうかが人生を分ける。昇任できずに任期で退職していく人もいっぱいいる。めでたく昇任したらガッコウに入らねばならない。採用され入隊したときには下士官として「命令される側」の素養を身に付けるが、ここでは「10名程度の小グループの指揮官」としての振舞を学ぶ。指揮”する”側になるワケ。

ちなみにここでの経験って、今私がセンセイ業をするのにすごく役立ってる。私のインストラクションの圧がすごいっていう人がいるけど、それは声だけで人を従わせることができることを知っているから。時にそういう声のもつ力が圧倒的に人を安心させる。ホントはまじでヤバい状況のときに「大丈夫だ、安心してついてこい。絶対死なせない」と、ドスの利いた声で断固として言ってやれる人で私はありたい(いつもは違うよ)。そしてその力強い声を発することが、状況をホントに動かすかもしれない。

J衛隊のガッコウ、猛烈にしんどかったけどおもしろかったなあ!
班対抗駅伝(複数人で組んで走る。誰も脱落させない)、翌年夏に死人が出た10キロ走(ホントです)、マジで突いたら先輩が吹っ飛んだ銃剣道競技会、風邪で39℃の熱を出し泣きながら指揮した教練(気をつけーとか敬礼!とかやるアレ)、リーダーとしての実力が丸裸にされ「あゝ、こいつと一緒にゼッタイ戦争いきたくない」という人が明確になるむつみ演習(陸上自衛隊むつみ演習場という山の中で二泊三日かけてやる戦争ごっこ)。

 

学生99名のうち可憐な女子が10名。最年少のわたくし。たぶん四階建てだった隊舎の、二階にある女性自衛官の部屋に酔って迷い込んだ男子学生がこっぴどく酷い目に遭わされたことも懐かしい。

そしてこの度心によみがえってきたあのこと。もう時効よね、言ってもだいじょうぶよね。

「指定場所に居住する義務」がある自衛官は、基地から外に出るには「門」を出なければならない。「門」を出るには「許可証」というのがいる。「門」には「ケイエイ」という人がいて身分証明書と許可証をチェックして、入っちゃだめな人を入れないように、また、出ちゃダメな人が出ないように見張っている。

あるとき、ホントは外出しちゃいけないことになっているひとを外出させるために、ちょっとした細工をした。当時の外出証は、板チョコ2カケくらいのサイズのプラスチック製だった。それを基地外周の堀の外から柵のなかに投げ入れて、複数人で再利用して外出したのです。行きは良かったんだけど、帰りにその札がお堀に落ちちゃってねぇ。明け方までかかって男子数名が探しあて事なきを得た。これ、バレたらマジでマズイやつ。「脱柵」といって懲戒処分もんですから。でももう時効だしね!総員99名異状なしだよね。

規則やぶりは、これくらいの気合と迫力をもってやって欲しいものである。二極の対立とともに、いつかどこかで誰かが定めた規則をも超越せよ。ぶーちー、レッツエンジョイ寮生活。

ん?今日はYogaの話は?