蓮は泥中より発す

心身一如に生きるヨーガ教師の日記

№362 感情と欲求を大切に取り扱う

「それ故にアルジュナよ。汝の食べるもの、供えるもの、与えるもの、苦行するといった行為のすべてを、我への捧げものとせよ。」
  バガヴァッド・ギーターⅨ-27

 

 

ストレスも感情という概念も、正確な内容がわからないまま使われている。

 

ストレスと同じように感情にもいくつかの要素がある。

心理学者のロス・バックは、感情には3つのレベルがあるとし、私たちが意識する程度によって分類している。

 

レベル3:どう感じるか

自分の内部から発する主観的な体験である。

これを体験するときは、怒り、喜び、怖れなどの心の状態と、それにともなうからだの感覚は意識されている

 

レベル2:他者がそれと見て取った感情

私たちがそれを意識しているかどうかにかかわらず、ボディランゲージによって伝えられる。

言葉によらない信号、独特の行動様式、声の高低、動作、顔の表情、軽くさわること、何かをするタイミングや言葉と言葉のあいだの間の取り方によってさえ伝えられ、生理学的な影響を及ぼすこともある。

多くの場合、本人たちはそれを意識していない

(ヨーガの瞑想や茶道はこの無意識の動作を意識的な行動に変える訓練であると考えている。自動運転から、マニュアル運転に変更する。)

 

自分がなんらかの感情を伝えていることに本人が気づいていないのに、周囲の人間ははっきりそれを読み取っているということは往々にしてある。

レベル2の感情は私たちの意図にはかかわりなく、他者に影響を与えている

 

両親にとって、子供が表現したレベル2の感情が、彼らの不安をかきたてる種類のものだとその感情を許容することは非常に難しい。
特定の感情の行動化を禁止されたり、それによって罰せられたりした経験があると、その後同じような感情を抑圧するように条件づけられてしまう。
自分で押さえつければ、恥ずかしい思いをしたり、拒絶されたりすることはないからだ。

しかし、そういう条件付けをされると、感情的な能力は損なわれる
その子供は将来、感情やそれに伴う欲求を適切に処理することができないだろう。
その結果、一種の無力感を抱くようになる。

 

ストレスに関する文献には、無力感が身体的なストレス反応を誘発する可能性についての報告が多くみられる。

ストレスの多い仕事や本当の自由を奪われた生活から抜け出すことができないと感じている人は多い。

 

さて、3つ目の感情について。
レベル1:感情からの刺激によって起こる生理的な変化のこと。
例えば脅威に対する「闘争か逃走」反応をもたらす、神経系、内分泌系、免疫系の活動がこれに当たる。このような反応は意識的にコントロールされたものではなく、外からは直接見ることができない。
ただ起こるだけである。
本人の自覚も無しに起こることがある。

 

そうした反応は緊急の脅威に対しては適しているが、本人が知覚した脅威に、何らかの方法で打ち克ったり、それを避けたりできないままでは、いつまでもその害が生じることになる。

(ヨーガの体操や呼吸法を適切に用いることで、問題となっている無意識の反応の意識化を促すことができると考えている。)


からだの恒常性を維持しながらストレスに対処するために重要なのは「感情コンピテンス」を得ることだ。これは、効果的なヨーガ指導の核になる重要な点でもある。

感情コンピテンスとは自分の感情や欲求に、適切な方法で十分に対処する能力のこと。

感情コンピテンスを獲得するにはある種の能力が必要だが、そうした能力は、今の、論理的であることが感情的であることよりも望ましいと一般にみなされているような社会には、欠けていることが多い。


感情コンピテンスを獲得するには、以下のものが必要である。
・ストレスを受けていると気づくための、自分の心の動きを感じ取る能力

・自分の要求を主張し、心の境界を守るために感情を効果的に表現できる能力

・目の前の状況に相応しい精神的な反応と、過去を引きずっているだけの反応とを見分ける能力
(私たちが世間に望み、要求することは、子供の頃に満たされなかった無意識の欲求ではなく、いま現在必要としていることでなければならない。過去と現在の区別が明確でないと、実際に経験していないうちから喪失感や喪失への脅威を感じてしまう。)

・本当に満たす必要のある心からの欲求に気付くことのできる能力
(他者からの受容や承認を得るためにそうした欲求を押さえつけてはいけない。)

 

ここにあげたような要件が欠けるとストレスが発生し、からだの恒常性が崩れることになる。その状態が続けば健康が損なわれる。

 

健康を危険にさらすような隠れたストレスから自分を守りたければ、感情コンピテンスを育てることが必要である。
またそれは、既に病気にかかっている人が回復するために取り戻されなければならないものであり、今後の病気を予防する最良のクスリともなる。

症状や病気に対して心や感情が大きな影響を与えているのだとしたら、単にポーズを取って健康を取り戻せるわけではないことがわかって頂けると思う。