蓮は泥中より発す

अद्वैत :非二元に還るプロセスの記録

№360 情緒的なストレスの緩和

アルジュナよ。すべての者の信仰心は、その生まれつきの性質に応じて形成される。信仰心がその者を形成するのであり、その者の信仰心のあり方が、まさにその者自身なのだ。」  バガヴァッド・ギーターⅩⅦ-3

 

 

H・セリエは、ストレスの生理的影響はおもに体内の三種類の器官に働くことを発見した。
内分泌系では副腎に目立った変化が起こる。

免疫系では脾臓、胸腺、リンパ節が影響を受ける。

そして消化器系では腸の内壁が影響を受ける。

 

ストレスを受けたラットを解剖すると、副腎の肥大、リンパ組織の縮小、腸の潰瘍がみられたそうだ。

こうした変化はすべて、中枢神経系とホルモンの作用で起こる。

 

なんらかの脅威を知覚すると、脳幹の視床下部CRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)を出す。

CRHは少し移動して、頭蓋骨下部の穴に収まっている下垂体に到達する。
下垂体はCRHの刺激を受けてACTH(副腎皮質刺激ホルモン)を放出する。

ACTHは血流にのり、腎臓上部の副腎に到達し、副腎皮質に刺激を与える。
すると、副腎皮質ホルモン(コルチコイド)が放出される。

 

副腎皮質ホルモンのうち、最も知られているのがコルチゾールである。
コルチゾールは体内のほぼすべての組織に何らかの方法で働きかける。

 

視床下部―下垂体―副腎は、一連の機能の流れを形成するひとつの軸と考えられる。

この軸が、ストレスに関わる体のしくみの中心であり、感情が免疫系その他の器官に直接的な影響を与える経路なのである。

 

はじめに上げたストレスの三大影響はそれぞれ、
副腎に対するACTHの亢進効果

免疫系に対するコルチゾールの抑制効果

腸に対するコルチゾールの潰瘍発生効果、によるものだということ。

 

例えば、喘息、大腸炎、関節炎、がんなどの治療でコルチゾール系のクスリを処方されている人の多くは、腸からの出血の危険性があるため、腸壁を保護するための別の薬剤も取る必要がある。このコルチゾールの影響によって、慢性的なストレスが腸のがんになるリスクを高める理由の一部は説明できるだろう。

 

さらに、コルチゾールは骨密度を低下させる働きもする。
うつ状態の人はコルチゾールの分泌が多いため、閉経後に骨粗鬆症と大腿骨骨折が多いという。

 

もちろん、こんなおおまかな説明ではストレス反応を語るにはまるで不十分だ。
ストレスは事実上体内のすべての組織に影響を与えるのだから

意識するしないにかかわらず、攻撃あるいは脅威だと知覚しただけでも反応は起こる
結局のところ、ストレッサーはすべて、生きものが生存のために不可欠だと感じているものが欠けていること、あるいはそれがなくなるかもしれないと恐れていることなのである。

セリエは書いている。
「躊躇なく言えることは、人間にとってのいちばん重要なストレッサーは情緒的なものである。」

 

ヨーガの戒律・ニヤマ(Niyama お勧め事項)のひとつに、サント―シャ(Santosha 知足)がある。
実はこれはストレス対処のため、そして心身の健康の維持増進に、この上なく重要な意味を持つ。

「今よりもっと悪いことになったらどうしよう」という恐れが、人の健康を損ねているように見える。同時に、人を救うまっとうな期待もある(足を掬う種類の期待もあるが)。

ああ、今日もこうして目覚めることができた!と毎朝驚きを持って目覚め、喜び、ほんの少しずつであっても、私の取り組みは何かの役に立っているはずだと信じ、また今日も一歩、歩みを進める。
そういう思考を持てるよう、自己を訓練する。それが知足の教えだと思っている。
バカみたいと考えながらも、実際にからだを動かし声を出せば、心身はその気になる。

疑り深い人は笑うだろう。
しかしこの教えが、人の神経系の働きをベストな状態に保つためのものだとしたら。

ヨーガでは師の教えを鵜呑みにするなと教えられる。
我が身で試して、自分で確信を持ててから信じる。
確信を持って言う。

教えは私を裏切らなかった。

しばらくバカになって、毎日胸に手を当てて「私は私のことを愛している!!」と語ることを40日続けてみたらどうなるか、数名の生徒さんと一緒に実験したことがある。
やはり、教えは裏切らなかった。

ただし、効果は練習量に応じて現れた。
量は質となるのなら、私だって頑張れる。