蓮は泥中より発す

心身一如に生きるヨーガ教師の日記

№471 五蔵と感情

星の死を知らずに生きていくように君の不在が日常となる  谷川電話

 

 

 

昨日、肺と悲しみについて書いたので、今日は五臓と感情についてお話しておこうと思う。

 
五臓とは、西洋医学でいうところの内臓の概念とは異なる、人が生きるのに必要な働きを五つに分類したものである。
(ヨーガの五蔵説では「蔵」、漢方等の五臓は内臓の「臓」の字があたっている。)


西洋医学では「腎臓」というと、血液を濾過して尿を生成し体外に排出する臓器だが、東洋医学ではもっと大きな意味で「生命力の宿るところ」と考えている。

ちなみに腎の働きが低下すると、むくみや冷えを招き、ホルモンに関わって女性の月経痛や不妊の原因にもなるとされるが、西洋医学でこれらの症状の因を腎臓と関連付けては考えない。腎は知能にも関連するため、弱ることで認知症になるとも東洋医学では考えるそうだ。

 

五臓とは人間が健康に生きるための要であり、人間も自然の一部であるとする東洋の世界観と調和している。

ヨーガでは肉体を「食物鞘」として、もう少しひろい枠組みで捉えている。ヨーガやアーユルヴェーダの世界観は垂直的、中医や漢方の世界観は水平的、と伺ったことがあるが、そのとおりだなと思う。

5つのエネルギーがこの世を支えているとするのは、数としては同じ。
インドでは五元素/パンチャ・マハブータの中に「空(アーカーシャ、空間のこと)」や「風(ヴァーユ、ものを動かす力)」が含まれているが、中国や日本に渡る過程でこの二つは当然そこに在るものとして明記されなくなり、「木・金」の要素が加わって五行となったのは興味深いことだと思う。個人的には、空・風は意識させる方向で圧をかけて欲しいような気がする。

 


さて、五臓六腑の働きと七感情についてみてみよう。
五臓にはそれぞれ対応する”六腑“というものがあり、ペアになって働いている。五蔵の次にカッコ書きで示してあるのが対応する六腑である。

 

肝(胆):
氣や穴の流れを円滑にして行き渡らせる働き(疎泄作用)。血を貯める蔵としての働きもある(蔵血作用)。
情緒の安定と深く関わる。「怒り」に相応している。「カンにさわる」という言葉があるとおり、怒りっぽくなるのは肝と関係している。
目と密接に関係している。

 

心(小腸):
人間の生命にとって最も重要であり、強い陽気を持つ心。五蔵と六腑すべてを統括するリーダー的存在。五蔵の持つ固有の機能を調和させまとめてくれている。
血脈を司り、血(けつ)を全身に巡らせる働きをしている。
「喜ぶ」「楽しむ」という感情に対応している。テンションが上がり過ぎたり、長く続きすぎると気・血の巡りが変調を来し、真の働きを損なう。
心は舌と繋がっている。舌の先を見れば心の状態がわかる。

 

脾(胃):
脾は胃と一体となって消化吸収を司る。飲食物から栄養を取り出し、気・血・水につくり変えて運び出す。
「思」、すなわち思考することと対応している。いらないことを過剰にくよくよ考えすぎると脾は疲弊する。また、脾が弱ると考えすぎることになる。
口と唇と繋がっている。正常なら食べ物を美味しく感じ、唇の色つやもよい。

 

肺(大腸):
肺は気を司る。呼吸を通じて古くなった濁気を吐き出し、新鮮な清気を取り入れて、からだのなかの気を入れ換える。
「悲しみ」「憂い」の感情に属している。秋になるとセンチメンタルな気分になるのは、肺による影響である。悲しみや憂いが過ぎることは肺の機能を低下させる。
鼻と密接な関係にある。

 

腎(膀胱):
腎は“生命の素”を貯蔵する場所。成長や発育、生殖といった人間の根本的な活動に必要なエネルギー(精/せい)を保管しておく。全身の水分代謝を行う。肺で吸い込んだ気を、丹田までしっかり収める働きもある。
「驚き」「怖れ」に属する。なにかにビクッとする驚きや、不安を抱えている状態は人の機能を弱らせる。逆に、腎の機能が弱り、感情に作用すると、息が上手く吸い込めない、過呼吸などの症状を引き起こすことも。
腎の働きは耳や歯の状態とつながっている。腎が弱っていると耳が遠くなったり、歯がもろくなるなどの影響が出る。高齢化によるからだの劣化は、腎に大きくかかわっている。

 

 

とまあ、ざっと書いてみたが、人には生来弱いところがあるもの(それも個性)なので、心あたりを感じたものがあったのではないかと思う。感情的な悩みどころが、内臓の養生からアプローチできるかも、と思うのは心強いことではないだろうか。自分のなかで強い感情を把握しておくのも大事なことと思う。

 

ただしこういったケアを自らのものにするには時間がかかる。一つの流儀だけよりも、ヨーガと漢方、などという別に視点を組み合わることができると(統合的なので難しいとは思うが)応用力は上がるように感じている。

焦らないこと、そして諦めない事が肝要なので、私も存分に自分の感情と向き合って生きたいと思う。