蓮は泥中より発す

अद्वैत :非二元に還るプロセスの記録

№712 安全なねぐら

なんといふしづかな呼吸なのだらう 蛍の群れにおほはれる川  筒井宏之

 

 

 

 

7月6日

梅雨らしい暑苦しい日。ここ数日気温低めで、蒸し暑い米子で調えた旅支度の中身はどれもこれもノースリーブだったという悲惨なことに。「どこかに貼るカイロ売ってないのかな」と思い、人知れずワンピース等の下に(パンツのお尻の部分とかに)ペタッと張り付けておきたい気分だったが、今日はいい。ノースリーブ日和だった。しかしまあ、何か軽い上着でもちゃんと入れておきなさいよと自分を叱ってやりたい。だいたいいつも無駄なものを運んできては後から反省しているが、今回は逆だったね。

 

 

さて、三日間のうち二日を巣鴨で飲んでいた私。しかも同じお店で。
そのお店には看板猫がいるという噂で、猫トイレもちゃんとそこにあるし食べログにもその存在が記されているのに、残念ながら私はその子とリアルに遭遇したことが無かった。出張中猫に飢え、もふもふ禁断症状が出そう。今回こそは会えるといいな、会いたい、頼むからいてくれ、そしてだっこさせろ!と思っていたら、念が通じて会うことができた。


豊満なボディ。私に抱きかかえられそうになって逃げてみるのだが、豊満すぎて動きが緩慢で容易につかまえられる。「にゃーん」といいつつ身をよじるものの、飼いならされちゃったイエネコのやる気のない抵抗って感じ。日々、トカゲやヤモリを血祭りにあげている我が家のニシキマチヤマネコ・あんちゃんのパワーに比べたら80%減。しかしあんちゃんの毛量がもふもふだとしたら、この子はもっふもふで豊満度はMaxである。お名前も大山乳業白バラミルクの本家本元の生産者さんであるあの生き物に由来しており、しかも柄がそのままホルスタイン。だんだん暑苦しくなるこの季節は換毛の真っ最中で、その日着ていた黒い服に毛がいっぱいついてしまったが、そんなのぜんぜんいいもんね。いやー、可愛かったな。まただっこしたい。

 

二回の会食(反省会?勉強会?)の参加メンバーはインテグラル理論×規夫師匠でゆるーく繋がっていて、どちらも上質ですごく楽しく、同時に唸る。どの人もこの人もほんとにすごいけどみんなほんとに変わり者だ。だからこそこういう一風変わったコミュニティはすごく大事で、変わり者仲間を守りつつ優しく育んでくれる。

 

 

数日前、ひょんなことから自分という存在の泥のなかにある影が動いた。数日が経過した今ふりかえると「なんでまたそんなことに、そこまで」と情けなく、驚くが、ここが心身に巣くった情動のパワーの凄いところ、そして怖いところだろう。

耳がカッと熱くなり体のなかになにかが蠢いて、心素のなかで緩く関連づいている過去の不快な思い出が芋づる式に連想ゲームのように湧き上がり、過去そのときの身体の感覚を一緒に連れてくる。いったんは理性で収め、リフレクションジャーナルのなかで理性的に片を付けたと思ったものの、規夫師匠にそのことに関連づいた懸念事項をご相談したらまた燃えあがってしまった。

 

もういったい自分が何に対して反応したのかもわからなくなり、日々きちんと落とし込むことができなくてモヤモヤしている些細な事々が関連づいて大爆発した。そして身近な方々にすごくご迷惑をかけてしまった。

 

規夫師匠は、いつも私にとって必死に頑張ってやり続けてきたことを「もうやめろ」と言ってくれるひとである。「やめろ」と言われることは、やっていて人に褒められる類のもの。かつて毎日1時間とか座って(瞑想して)いたのにやめろと言われ、その訳もちゃんと話してくれた。頑張ってここまでにしたものをやめるのにはすごく抵抗があるし、やってきた自分に酔って頭がおかしくなっていることに気付けない。ここに冷や水を浴びせてくれるのはいつも規夫師匠である。世の中が「がんばんなさい」といって尻を叩くものを否定し、「そんな努力を続けているとかくかくしかじかでこんなふうになるぞ」という指摘が自分の心の奥底にグサッと刺さるから、「やめろ」というアドバイスを受け容れてきたし、努力を辞めることを通じて違う世界を見ることができたと思う。

 

今も、あることを「やめろ」と言われ、それは私がここまでにするのにほんとうに努力をして骨身を削ってきたものなのだった。ようやくここまでにしたのに、という想いと、ここまで頑張ってきたから起きているマイナス要件に私も実のところ薄々気付き始めており、今回動揺した一件とそのマイナス要因は奥深いところでつながっていて、私が実存的な統合(そんなことが可能だとしたら)へ至るためにどうしても受け容れなければならない気付きだった。

 

とまあこんなワケわからんことを書くと「つまらん」と叱られそうなのでここでやめておくが、要するにがんばりすぎても自分をほんとうの意味で滋養してくれる境地には至れないのだった。上昇と下降の道があるのに、片方ばかりをがんばり続けてきた。手を放して人に甘え、そのままの自分を諦めて受け容れていくことが上手にできるようになるのにいったいどんなことをしたらいいんだろう?

 

でもとにかく今回はチームメンバーのお二人にめちゃくちゃ迷惑をかけて、それでも自分はここにいていいんだと思わせてもらった。一匹狼だったものが安全なねぐらを見つけたような気持で、深く、心から深く感謝している。今回のことは、後々私にとって深い意味を持つ重要な経験になるだろう。ほんとうにありがとう。