蓮は泥中より発す

心身一如に生きるヨーガ教師の日記

№658 痛みを消してくれるもの

会いたさは来る、飲むための水そそぐとき魚の影のような淡さに  千種創一

 

 

 

5月11日
連休中に体重が増えてしまったかもしれない愛するオタクは、昨日旅に出た。予定より1日遅れだが今は自由の身、予定でもなんでも何でも好きにすればいいし、それができる。体重増のことは聞かなかったことにして、体重計にも乗るなと言っておいた。もしかすると旅が過酷で痩せちゃうかもしれないし、旅が楽しくてストレスが大幅に軽減されて食行動に変化が生まれて激ヤセしちゃうかもしれないし。

太ってるのがよくない、とまではいわない。でもかつて私に向かって発せられた「自分は健康なデブだ!」というなんのイイワケにもなっていない主張は、駆け出しの頃ならともかくすっかり理論武装した今の私には通用しない。すぐに論破。そして「HbA1cがそんな値だってことは何を意味するかというとなあ…」というお説教が始まる。

アーユルヴェーダ1年生のとき、バット先生(WHO顧問)から脈診してもらって「すでに糖尿病の気が出ている」と言われて以来、糖尿病とダイエットに関してはやたらと勉強と人体実験をしてきた。これは断言して良かろうと思うが、世のなかのダイエット常識は9割方間違っているかなにかが足りない。

この「とうにょうびょう」という名称がいけない、と言っている外国人医師がいて、私もこれには激しく同意する。甘い匂いに誘われてタイやヒラメじゃなかった、蝶や蜂がブンブンのどかに飛び回る風情がするが、実のところ甘い匂いになにかが誘われるレベルの糖が尿に出ていたらすでに合併症が発症しているはず。

肥満とは炎症性の代謝障害である。驚くような多彩な合併症を連れてくるし、全身の血流を低下させありとあらゆる疾患への抵抗性を奪う、今すぐ治した方がいい病気なんだととたくさんの方に思ってもらえたら。ということで「ダイエット指導」までしている私。ほんとのほんとに「やせたい」と思っている人ならダイレクトにこれで指導。でも実のところほとんどの人が「やせたい」という言葉のウラに別のなにかがある。そういう場合は地道にYogaから始めてもらうしかない。


ダイエットとは一生続く食事との付き合い方をハッピーなものにしていく、愛の行為。痩せることとはダイレクトに関係しない自己との対話、そして自我と自制心のハナシのはずだ。ダイエットや減量の話をするとき不思議に思うことがある。みんな相手のことしか問題にしないのよね。なぜなのかしら?
与えるあなたと受け取る私。相互に関連しあっているのに。カロリーも栄養も、他のなにもかもも。



病気や症状に関しても同じことが起きている。
つい二日ほど前、とある知人(クライエントさんではない)から「痔になりました」という相談があった。クライエントさんや私の職業に深い興味をお持ちでない方の健康相談には基本的に乗らない私だが、「手術しかないでしょうか」と問うてきたので、あーこれはヤバいと思って返信してしまった。米子駅前に切りたくて切りたくてたまらない肛門専門医がいるのを知っているからである。

痔を完治できる医療があるとしたらアーユルヴェーダしかないでしょう、たぶん。日本におけるアーユルヴェーダの症例報告って、痔の治癒例ばっかりだもんね。ホントですよ。痔、痔、またもや痔、って感じ。なぜかというと「クシャラ・スートラ」っていう治療法がすごいから。

スートラっていうくらいだから糸を使う治療なわけだが、日本はこの点でもやたらと発展を遂げていて「金沢1号」とかいう糸が開発までされちゃっている。でもこの治療は相当に病状が進行した方向け。お茶の間の皆様もおられるでしょうから、あえて具体的な病名は出しますまい。知りたい人は直接聞いてね、ビール飲みながらなら話してあげましょう。

 

で、相談の話に戻すと、その方の食生活が酷いのは知っていたので、「食生活の改善とセルフマッサージならば付け焼刃ではない完治が望めるでしょう」と返しといた。するとまた懲りないことに「時間がかかりそうですね」とくる。おいコラ、あらゆる症状が進行して病気になって顕現するまでに、気の遠くなるような時間がかかっているのか君はわかっているのか?!もちろんすべてではないけれど、習慣は重大な病気の発症原因なんだぞ!養生法というものが昔から微に入り際にわたり伝えられているので、少しずつ手繰り寄せていくしかない。いまのこの小さな不快感から目を逸らさずに、そこに取り組んでいくことを諦めないこと、それが大事。

ちなみにこの人のまずい食生活は、パンとグラノーラをすごく召し上がっているということ。アーユルヴェーダではパン類は体内を乾燥させるので、必ず焼いて、油分を添加して食べろと教えられた。私もたまにはパンを食べるが、クロワッサン(や、ラ・テールのひよこ豆のカレーパン)のような既に油分の多いパンでなければ、バターやオリーブオイルをしっかり塗って(浸して?)食べる。パンが好きな人は重々ご注意を。また普段の生活で油分摂取が少ない人があまりに多過ぎる。これにも注意してほしい。

 


なんだかイロケのない話が続いたから、最後は違う感じで〆よう。
昨日から引きつづき本Bを読み進めていたら、主人公Lが自分の内面を吐露する重要なキーワードとして「フレンチキス」という言葉がクローズアップされてきた。オリジナルラブ田島貴男の名曲に“Deep French Kiss”というものがあるが、毎日のようにこの曲を聴きながら「Deepなフレンチキスとは不可解なことを言いおる」と思い続けてきたのだが、ところがどっこい私の方が間違っていたことが明らかになった。米子にいるときういろ(猫)のおでこにする軽いキスはフレンチではないキスだったのである。日本人にはよくある誤解とのこと。へー。

ちなみに主人公Lは線維筋痛症をはじめとする多くの疾患で闘病しており、日々激しい痛みに苦しむ。彼女に主治医がかけた言葉は「痛み」や「治癒」ということに関する重要な示唆を含んでいると感じたが、丁寧に説明されなければ人を傷つけることにもなろうかと思うのでここには書かない。

米でベストセラーになったとのことだったが、さもあろうという本だった。良書に出会うことは実に至福である。


~ 彼にフレンチキスをされると、彼が体のなかに入ってきて大きなスイッチを入れられたみたいになって、私は即座にオンになるの。全身のライトが灯るんです。彼のフレンチキスは、世界一すてきなキスなんです。
私は痛みを消してくれるものをようやく見つけたんです。どれほど苦しいか知らない人にわたしを責める資格なんてないと思います。女性はお互いの生き方を批判してはいけないと思うの。
「三人の女たちの抗えない欲望」 リサ・タッデオ 早川書房