蓮は泥中より発す

心身一如に生きるヨーガ教師の日記

№530 空、そして打撃

ゆるやかな傾斜に水が細長く奪われていくようなはじまり   木下龍也




1月2日。

仕事始めで都内の秘密の場所へ。

元旦の昨日は一歩も外に出ず、ぬくぬくした室内から青空を見上げていた。
娘たちはお散歩がてら恵比寿方面に出かけたが、どこも休みだったそうである。成城石井の噂の(母の推し)杏仁豆腐を食べたかったそうであるが、気の毒であった。
2日には開いていたので、仕事帰りに買って帰った。母のいうことがようやく理解できたようである。よかったねえ。

 

秘密の場所は長女曰く「山手線の秘境」に、ある。
この度、娘たちも一緒にこの秘境まで足を伸ばして見た。

山手線で、西から行くと新宿の向こう、東からだと上野の先、要するに北側は行ってみたことがない“謎のところ”だそうで、確かに私も、駒込と日暮里がよくわからなくなる時がある。ええと、私はどこに行こうとしていたのだっけか、と思って慌てて駒込で飛び降りたりする。
これは年にほんの数回、米子鬼太郎空港に向かうためにJR境線に乗っていて、弓ヶ浜と和田浜の位置関係がわからなくなり、空港までちゃんと辿り着けるのか不安になる感覚に似ている。
が、なにしろ山手線というハイカラな電車には「いまここですよー、あなたが行きたいところまではあと何分ですよー」という明確な表示がなされており、自力でボタンを押さないと扉すら開かない鬼太郎電車とは、そもそも格が違うのだった。都会だな。

この北側のエリアには母が毎月通う秘密の場所があったり、規夫師匠がおられたりする。
子供たちが一度行ってみたくなっても不思議ではない。秘密の場所にて、母がいつもお世話になっているエライ御方(秘密のチームのリーダー)にご挨拶をして、仕事のある母を残してあっさり去っていった。
よく考えたら、いつも仕事させて頂いているお部屋も見せてあげればよかった。そしたら年がら年中フラフラしてばかりの母が、お部屋効果でちょっとだけエラそうに見えたかもしれないのに。惜しいことをした。

 


さて、今年の仕事始めはオンラインから変更となって、リアルセッションとなった。
オンラインセッションでも、生徒さんの自覚できる効果を生むことが十分に可能。これだけのことがやれるなら、やらない理由はない。しかしリアルには敵わない。
某マヨネーズ会社のエライ方が「もう、オンラインは懲り懲りなんだぁ!」と夜の赤坂見附で叫んでいたが、私も激しく同意したい。

リアルいいよね。
そもそも私は、少人数レッスンの方が効果も満足感も高いと感じ、3人から最大8人くらいまでがいいと主張してきた。箱の大きさにはかかわらず、である。感染症対策でもなんでもなくて、これ以上だと空間のなかで構築できるなにかが薄まる感じがする。
このご時世「対策」が重要であるので、秘密の場所くらいの規模の箱だと、感覚を2mあけても5人全然いける。
「使っていいよ」という寛大なお許しを頂いちゃったので、今年は秘密の場所で秘密のグループセッションをやっちゃおう。秘密のセッションなので、ある日突然あなたにお誘いがあるかもしれない。ビクビクしながら待っていてください。



リアルがなぜいいか、ヨーガ的考察を行ってみたい。
インドにおける「五元素」の概念を知っておられるだろうか?
晦日の串揚げ屋で、規夫師匠にこの五元素の話を熱く語ってしまった。ヨーガ療法士養成講座前期課程でこのことについて初めて聞いたとき、単に「ふーん」と思っただけだったのに、年々しみじみ「これって凄い」と思うようになってきている。ほんとうにすごいのか、私の頭がヨガ毒で侵されてしまったからなのかはわからない。

五大元素、Panca Mahabhuta。
5がパンチャ、マハーは「偉大」、ブータが元素のこと。
空、風、火、水、地、5つの元素によって、この世のすべては成り立っている。
すごく深いはなしなので、細かいことはここには書かない。でも大事なこと。

瑜伽名(聖名)を拝受したとき、名前を記したカードと、授かったマントラの記載されたカード、スワミ・ヨーゲシバラナンダ大師のお写真、そして5ルピーの紙幣を頂いた。この5ルピーは五元素を示しているとのことだった。
五元素がないと、私たちはここにはいない。すべてのものがここにない。

空の概念のはなしも語り始めるとキリがないのだが、これは一般的に言われている仏教的な「空」とは違うと私は理解している。
空 Akasha とは、場である。物事が生じては去っていく、場である。
風 Vayu とは、なにかを動かす力、エネルギーである。このVayuがなければ、なにも動かない。
この二つの概念を元素に含んでいる思想を、私は素晴らしいと思う。

私のこの理解も、実はバカバカしいほど薄っぺらいものなのかもしれないが、別にそれでもいい。ただこの思いをもって、私は生徒さんに向き合っていると思う。
空元素(Akasha)に満ちた同じ空間のなかで、隣り合った先生の吐息(Vayu)を感じながら行う運動は、まるで違う安心感を覚えるだろう。

ここでリアルの場を共にしているとき、ことさらに意識しないままに、私はあなたを間違いなく含んでいる。同じ空のなかにあって、オンラインではできないことができる。少し攻めたアグレッシブな動きにも挑戦させられるし、その動きのなかでストレスに満ちた呼吸が生まれていれば、もっと吐くことを意識して楽になれることを教えてあげられる。

オンラインでは、ヨーガが大事にしている「打撃」を与えにくい。そう感じる。
秘密の場所の「空」のなかで、一緒にいなければ与えられない打撃を与えつつ、包み込めるように。
東京での少人数セッション開講、これも今年の目標。