蓮は泥中より発す

心身一如に生きるヨーガ教師の日記

№507 ビキニ、そして前鋸筋

想うとは水ににじんでふるえる声紋 けばだちながら積まれゆく雲  井辻朱美

 

 

 

12月11日
感染症の絡みで、O先生の上京が予定通りではなくなってしまった。昨日は休養日としていたのだが、今日もぽっかり休みとなった。

昨日は、某所で数年ぶりに泳ぐことができた。
20代半ばの頃、幹部候補生学校なるものに行きたいという野望?を持っていたので、体力増進のため水泳を習いに行った。毎朝10km走っているのに、まだ足りない。若い頃ここまで体を使っていたことが、50代を目前にした今、非常に活きていると思う。
約1年かけて四泳法を習って以来、水泳が大好き。航空自衛隊の、滑走路を有するような大きな基地には実に立派な屋内プール(50m。かなり深い。訓練のため。)があり、出張時にも水着を持参して泳いだものである。

当時は非常に狭い世界に住んでいたので、フィットネスクラブに所属するのは刺激的な体験だった。水泳を学ぶ中で友達になった方々からトライアスロンに誘われ、自転車に乗るようになり、元日大スキー部の女子に誘われて頻繁に飛騨の山にスキーに行くようになった。隊外の人と友達になることは、私の世界を大きく広げてくれた。

 

さて、今年はプールに行けなかった。コロナのせいで。
毎年、鳥取中部にある「倉吉市民プール」で、子供と一緒にぐるぐる流れていたのに。実のところ、今年は壮大な野望があったのでどうしてもそれをコンプリートしたかったのに。

レイキの師マスター・マリコは、普段はLAに住んで仕事をしている方である。
なのでその感覚は山陰に住む者からすると、かなりぶっ飛んでいる。この夏、鳥取県米子市皆生(かいけ)にある超ローカルな海水浴場に、マスター・マリコがビキニで現れたと聞いた。「皆生でそんな水着を着ている人はいない!」という話で大いに盛り上がったのだが、内心とても感心した。
さすがわが師! そして私も師を見習って、海は無理でもプールで、人生初のビキニを着て泳いでみたいと思った。腹を隠している場合ではないと。

 

早速ビキニを購入しチャンスを伺っていたのだが、このご時世、どこもプールは営業停止である。このまま年を越したくない…と思う心が天に通じたのか、一部営業再開したプールに乗り込むことができた。ただし、ほんとうにプールしか使えない。洗面台なども使えないのである。まあでもそんなことはどうでもよい。
そして泳ぎましたよ。ビキニで、750mほど、ただのクロールでガッツリと。

数年ぶりに泳いだのに、特に苦しくもなく、ほぼ休みなくこの距離を泳げたので、普段行っている調気法やラウジング・エクササイズ(心肺機能を高めるためのAsana)の効果を確認できた。また、以前、規夫師匠に教えて頂いた、トータル・イマ―ジョンという泳法をなんとなく確認できたことも収穫だった。これだけ楽に泳げると実に楽しい。不測の事態があって途中で切り上げたが、1kmでも泳げそうだった。1,2kmを楽に泳げるようになりたいと若い頃思っていたので、これも今後の目標に設定できそうである。プールでこれだけ泳げれば、海での遠泳も夢ではない。楽しみである。

 

さて、ビキニを着た自分のからだは、マスター・マリコの豊満なボディ(想像)とは違い、トリガラみたいだった。

この夏、夏バテか心労かわからないが食事がとれなくなって痩せてしまい、同時にO先生から細かい筋群の使い方を学び始めて、カラダが弛まなくなった。気になる二の腕も、手羽先のように引き締まってきた。でも、肋骨の下側が前に出ていて(専門的にはこの部分をなんと呼ぶのかわからないが)これが実にトリガラ感を醸し出しているのである。しかも脂が足らず、ダシがあまり出なさそうな。

そこでやっぱりO先生の登場。。

右の手羽先が気になる、肋骨下端が気になる、とご相談するために、普段人前では絶対に着ないホルターネックのウェアを着て肩甲骨を丸出しにし、筋肉の部位やその部分を活用するための動きをご教授頂いた。
そこでクローズアップされたのが、「前鋸筋」なる筋肉の存在である。その後1時間かけてひとりで実習を行い、「前鋸筋がはまる」感覚を掴むことができた。

 

この前鋸筋というのは、たぶん天然のブラジャーみたいなものである。骨盤底筋群が天然のコルセットであるのと同じように。

人がなんらかの理由で腹筋を鍛えたいと思うとき、シックスパックに割れたお腹を目指すように思う。同様に、女性が美しいバストを作りたいと望むとき、大胸筋を鍛えろということも聞く。でもそんなことは実に雑なアドバイスであることが、今回よくわかった。

 

腰痛に悩む方は確かにお腹の力がない。カラダの要に支えがないから痛みを経験することになる。ここに力を入れられるような対策を打たねばならいのだが、よくあるアドバイスが「腹筋鍛えろ」というもの。でもですね、腹筋って、具体的にはどこの言ってるの?

 

この雑なアドバイスを何かに例えようとすると… 僕はあの人が好きだから、振り向いてほしい!と思うのか、僕は女がみんな好きだ!というのか、という感じじゃないだろうか。そんな壮大な心に振り向く個別の女はまずいないでしょう、ということ。

だからハッキリさせたい。
あなたの症状や悩みに、どこが、どのようにということを。

 

金メダリストの北島康介選手が腰痛を克服したのも、結局は小さな筋群を鍛えたからだとご存じだろうか。「スタビライザー筋」といわれる、カラダのバランス調整を行ってくれるような小さな筋群がある。すこしフラフラするような不安定な動作を行った時に、からだのなかで「あ、ヤバい。がんばらなきゃ。」と思って発動してくれるところ。

 

猫のポーズをもとにした、実にシンプルな動きを用いてその筋群を鍛えることで、腰痛は解消したとのこと。その指導に当たられた先生の著作を読んだ時、実に素晴らしいと思い、これでみんな納得するだろうな!と思ったが、そういう良書はほとんど人の目に触れないのだった。とてももったいない。



人を大きく変えるのは、結局のところ微細なエネルギーである。
O先生や伝統的ヨーガ、そして私も、やっているのは運動や動作を用いてこの微細なエネルギーを活性化させること。

そして究極的に、人のなかでもっとも力の強い微細なエネルギーは「思考」である。
だから実習の際には、「集中」して「雑念から離れる」ことが何よりも重要になる。
ヨーガ教師の仕事は、実はこの集中を実現させること。

 

何をやるかは、ほんとうはあまり関係がない。だっていつも言っているように、肉体は食べ物でできたカバーに過ぎないから。あなたが自分のことをどう思って、なにを為そうとしているかで、ものの形などじきに変わっていく。

だから私も、アートマンとしての、そしてブラフマンとしての自分が収められている、現時点ではトリガラのようなこのカバーを大事にしつつ、同時に、このモノがいかようにも変わり得る可能性と共に、ここに息をしていたいと思う。