蓮は泥中より発す

अद्वैत :非二元に還るプロセスの記録

№76 鍼灸治療と身体感覚

今日は鍼灸の施術の日でした。
我が家のすぐ近くで開業しておられる先生にご縁を頂いてから、今年で7年目になります。昨年3カ月ほどサボってしまった期間がありましたが、それ以外は真面目に通い続けています。

真面目にと言いますのは、私の診て頂いているI先生は、前後に脈診をなさり、その結果で、次は何週間後の受診かというご指示がお出しになるからです。
これまでの最長記録は4週間後。ただしこれは一度きりで、近頃はほとんどが3週間後です。調子が悪いと、数日後にと言われたこともあります。

ヨーガを行っているので、自分の体の感覚には非常に敏感です。
鍼治療を受けるようになってから、数日の間に自分が「したこと・思ったこと・食べたもの」が症状となることをリアルに実感できるようになりました。

「鍼は痛い、怖い」と思っておられる方も多いのですが、漢方(日本)の鍼と中国鍼は違います。これについては、統合医療学会の認定を得る際に学んでおり、実物なども比較して拝見していたので、始めから安心して身を委ねることができました。
トン、と鍼を打たれて、刺さったんだな、という感覚はありますが痛みはまずありません。
ただし、非常に痛い時はあるにはあるのです…

私が鍼治療を受けたきっかけは、2年ほど続く原因不明の腹痛のためでした。
ヨーガで開業して軌道に乗り始めたころから、夜のレッスンを終えて帰宅し、夕食を食べた後、下腹部にガスが溜まってのた打ち回るほど痛む、ということが度々起きていたのです。医大でも様々な検査をしたのですが結果はすべて白。しかし痛みは治まらない…というタイミングで、出会ったのがこの先生なのです。

アーユルヴェーダを学んでいるので、脈診の技術を体得するのにどれくらいの時間と学びを必要とするのかもよく知っていますが、先生が脈を診て、舌をご覧になるご様子に信頼感が湧き上がりました。

鍼を打たれると微細な感覚が体に生じ(電気が走っているような)、何らかの流れが調整されていることを感じます。
初めての施術の時のことです。背中(胃の裏辺り)に鍼を打たれてから、少し遅れて体の奥に「ずぅーん…」と重苦しい痛みが生じました。思わず「痛いです!」と申し上げると、先生は「表面が痛いか、奥が痛いか」とお尋ねになりました。当然、奥です。体の芯に当たるようなところに強く響く痛みがあります。そう申し上げると、「表面が痛いのなら私が悪いですが、奥が痛いのは『あなたが』悪いのです」と仰るのです。

そう、すべて私が悪い…
私の体が、悪いのです。そのツボは消化器のツボで、今思うと、必死に教室でのご指導をする中で心身が緊張し、それを緩めるために飲食をすることで消化不良が起きていたのです。「脾が虚していますよ」とのお見立てでした。
漢方で言う「脾」は、西洋医学では「膵臓」に当たるとのこと。そういえば症状が膵炎の症状に似ていましたが、検査結果には現れないのでした。それは「未病」だった訳です。そのまま生活していたら、いったいどうなっていたでしょうか。想像すると恐ろしい…

定期的な鍼治療のお蔭で、痛みは少しずつ軽くなり、また対処法も分かるようになり、約一年後には全く無くなりました。また、小学生の頃から「体質だ」と思ってきたものまで解消し、それが実は症状であったことを知りました。自分のどのような行動が症状を生じさせるかについての理解も深まり、ヨーガとアーユルヴェーダでの日々の養生についても工夫ができるようになりました。

代替医療の専門家で、自分の専門のみを過信する人を私は信用していません。以前からそうでしたが、この鍼灸治療の経験がさらにこの思いを強めました。
ご近所に住む方でありながら、毎月他県の先生の元へ学びに行かれるこの鍼灸師の先生は、東洋の智慧を学ぶ先輩であり、同士でもあります。

鍼灸治療を未体験の方にはぜひ施術を受けて頂きたいなと思います。皆様が良い鍼灸師の先生に出会うことができ、自分自身の健康に責任を持つ「養生」という選択肢を手にすることができるよう、心からお祈りしています。

人の手を借りることと、自ら行うこと。体に行うことと、内面に働きかけること。どれも大切です。